バイオエシックスBioethicsは、元来は現在呼ぶところの環境問題とその倫理を扱う学問として出発しました。内容は人口問題、食糧問題、環境汚染の問題を対象とするものでした。それが次第に医療倫理を対象とする学問領域へと発展してゆきます。授業では生殖技術とそれに伴う倫理的諸問題(代理母、卵子提供、凍結受精卵、出生前診断等)、人工妊娠中絶、安楽死などをとりあげて検討します。それ以外にも命の圧迫や生命の無化との関係で、暴力(世界の暴力の実態、子ども虐待、DV等)、死刑制度をとりあげて論じます。現代の科学と技術の飛躍的な進歩によって新たに問われることとなる生命倫理の諸問題や、片や人類の歴史とともにある諸問題を精査することによって、いのちとは何かを問うてゆきます。従来生命倫理の諸問題は医療関係者や専門家、一部の学者の間で論じられてきましたが、今や社会全体で取り組むべき領域と考えられるようになりました。それはこうした問題が医療や倫理だけでなく、社会、個々人、制度、法、国家と自治体、支援機構、思想、文化、風潮などとかかわりながら社会全体が問いなおされる問題であるという性格から来るものです。いのちがともするとおろそかにされ、軽視される場面が目につく時代にあって、いのちにかかわる問題を吟味してゆくことは、私たちにあらゆる問い直しを迫るものとなります。