人間学では、孤独、幸福、生きがい、苦しみの意味など、人間の根源的な問いをめぐって、身近な教材や物語を用いて一緒に探ってゆきます。
生命の倫理では、生殖技術、脳死、安楽死などの医療倫理、その他いのちにかかわる問題を多角的に見てゆきます。
バイオエシックスBioethicsは、元来は現在呼ぶところの環境問題とその倫理を扱う学問として出発しました。内容は人口問題、食糧問題、環境汚染の問題を対象とするものでした。それが次第に医療倫理を対象とする学問領域へと発展してゆきます。授業では生殖技術とそれに伴う倫理的諸問題(代理母、卵子提供、凍結受精卵、出生前診断等)、人工妊娠中絶、安楽死などをとりあげて検討します。それ以外にも命の圧迫や生命の無化との関係で、暴力(世界の暴力の実態、子ども虐待、DV等)、死刑制度をとりあげて論じます。現代の科学と技術の飛躍的な進歩によって新たに問われることとなる生命倫理の諸問題や、片や人類の歴史とともにある諸問題を精査することによって、いのちとは何かを問うてゆきます。従来生命倫理の諸問題は医療関係者や専門家、一部の学者の間で論じられてきましたが、今や社会全体で取り組むべき領域と考えられるようになりました。それはこうした問題が医療や倫理だけでなく、社会、個々人、制度、法、国家と自治体、支援機構、思想、文化、風潮などとかかわりながら社会全体が問いなおされる問題であるという性格から来るものです。いのちがともするとおろそかにされ、軽視される場面が目につく時代にあって、いのちにかかわる問題を吟味してゆくことは、私たちにあらゆる問い直しを迫るものとなります。
授業では旧約聖書の物語を中心に読んでいます。天地の創造、アダムとエバ、モーセの召命と出エジプト(十戒)、ユダとタマル、ダビデ物語(バト・シェバ、ナタンの叱責)、ナオミとルツ、詩篇と知恵文学などをテーマとして扱います。これらの章には人間と神とのかかわりを通して生々しい生の現実が物語の形で描かれています。この物語群の読み解きを通して旧約の世界観、死生観、人生観に触れます。旧約時代の編集者が関心とするところ、大切な価値と捉えるものが、いかにわたしたち現代人の懐く関心や価値とかけはなれているかを知り、ショックを受けることがあります。他方で、何千年にもわたって変わることのない人間の普遍的な価値に心打たれることもあります。人間と自然、神と人間、生きるとは、死とは、歴史、信仰共同体とは、そしてそれらの間のかかわりについて......、こうした人間存在に根源的な問いを発することなく旧約の物語を読むことはできません。