苧環が咲き始めました。菖蒲は1ヶ月ほど前から紫の花をつけ、その花の盛りはもう終りです。
苧環も菖蒲も難しい漢字ですね。苧環は「おだまき」と読みます。菖蒲は「あやめ」または「しょうぶ」と読みます。図鑑を調べてみると、「あやめ」はアヤメ科の植物ですが、「しょうぶ」はサトイモ科の植物のようです。この二つは、確かに、その刀状の長い葉は似ていますが、全く違った植物です。区別するためにか、写真の「あやめ」を「花しょうぶ」と呼び分けたりもしているよ、と近所の造園家Mさんが教えてくれました。
今回は、この苧環と菖蒲に関係する昔話のお話です。
日本の昔話には多くの「異類婚姻説話」が残っています。異類、つまり他の動物と人間とのあいだの婚姻話です。有名なものには「鶴の恩返し」がありますね。この種類のお話の中に、なぜか、蛇と人間の組み合わせは意外と多いのです。
余りに多いので、昔話の研究家は、これらの話を分類するために、型名をつけて
います。苧環はそんな型名の一つとして使われ ています。
苧環型(おだまきがた)昔話の共通点は、若者(女性、男性)のところに、ひんぱんに異性が通ってきます。そんな状況を不思議に思った年寄り(または親)がその若者に一つの知恵をさずけます。針に糸を通して、その異性の髪か衣服に針を刺し、去った後、糸を手繰ってその正体を見極める、といったものです。若者が、そのアドバイスに従って、異性の着物か髪に針を刺すと(髪か着物に見えますが、異類にとっては身体の一部なのです)、異類は苦痛のうめきをあげながら逃げ出すのです。逃げた後、その糸を手繰っていくと、古い沼や池の傍に身体を横たえた蛇を見つけるといった筋立てです。この筋立ての後には、菖蒲が登場します。菖蒲湯に入り、蛇よけを行うといった結末です。苧環とは、この話に出てくる糸を巻きつける糸巻きのことなのです。花がその糸巻きと似ているのでしょう。
高原に咲く花にも、こんないわれがあるのです。上記のように、苧環は現代の昔話研究家が話の分類に使ったものですが、菖蒲は今も信濃の人々の生活に根強く残っています。前出の造園家のMさんの話ですが、庭仕事にうかがった 飯綱町F団地のある家の玄関先に菖蒲が一束下げてあったそうです。その家のおばあちゃんがMさんに、それは蛇よけのおまじないだと教えてくれたそうです。この菖蒲は花のない「しょうぶ」です。
昔話が今も生きている信州の夏はこれからです。次回はできれば花に蝶が舞う写真を撮ろうと思いカメラを持ち歩いています。
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注:ブログへのアップが遅れました。今は、あやめの花は咲き終わり、苧環の花が終盤に入っています。